今宵は天使と輪舞曲を。

§ 02***勘違い。




 社交界ではいつでも話題の中心にある、今をときめくあのラファエル・ブラフマンと愛を交わす日が来るとは――。
 日が暮れた今もメレディスは今日起きた出来事が信じられずにいた。
 あれから彼の屋敷で夕食をいただいた。
 ラフマが用意してくれた手作り料理は家庭的な味で暖かみがあり、幼い頃に両親と共に食べた食事を思わせてくれた。
 ラフマはラファエルにとって第二の母親と言っても過言ではない人物だと聞いている。それだけに、彼女はとても目敏い女性だと思う。
 メレディスはラファエルとの間に何が起きたのかを何も聞かれこそしなかったが、きっと情事の後だったことは知られているだろう。それもそのはず、彼がいつにもなく甲斐甲斐しくメレディスの体を労っていたからだ。
 それに決定的なのは、ラファエルはメレディスの処女を奪った痕跡である血液がシーツに付着していたことだ。きっと今頃は例のシーツを彼女が見つけているだろう。

 ラファエルと二人、ブラフマン邸に帰宅したのは幸いにも世間では夕食時だった。
 おかげで誰からも問い詰められることなく部屋に逃れることが出来たのは救いでもある。

 メレディスは部屋に着くなりベッドに倒れ込み、日中に起きた様々な事柄が頭に駆け巡るに任せた。
 彼を受け入れた箇所がほんの少しひりつくものの、ラファエルによって介抱されたおかげで出血もすぐに治まっている。
 それにしても――彼の腕の中はとても心地好かった。


< 310 / 348 >

この作品をシェア

pagetop