今宵は天使と輪舞曲を。

 明日もまた、ラファエルと一緒に屋敷を訪れ、クイーンの世話をさせてくれることになっている。
 口から吐き出されるのは甘いため息ばかりだ。
 メレディスは嬉しさのあまり心が浮き足立っていた。


 静かな空間にノック音がした。
 壁に掛かっている時計を見れば、丁度夕食が終わる頃合いだ。たしか日中ではキャロラインから、今日起きた出来事を話して聞かせて欲しいとお願いされていた。そのことを思い出したメレディスは鍵が空いているのを目視して確認するとベッドに腰をかけた。
 だけどどうも彼女本人を前にして、キャロラインの実の兄であるラファエルからプロポーズを受けたことや愛を交わしたことを打ち明けるのは気恥ずかしい。
 面と向かっては告げられるはずもなく、入口から背中を向けて姿勢を正した。

「どうぞ入って」
 メレディスが促せば、彼女は静かに中へと入り、ドアノブを閉じた。
 中に入って来た人物から背中を向けるメレディスだが、部屋に入ってきたのは彼女だと疑いもしなかった。
 とにかく、今日起きた出来事を聞いてほしい。
 とりわけ、自分と友好関係を続けてくれる彼女には。

「キャロライン、わたしね。今日ラファエルからプロポーズをされたの。すごく嬉しいわ。天にも昇る気持ちってこういうことを言うのね、彼は昔飼っていた馬のことや形見のブローチのことも全部覚えてくれていたのよ!! しかも彼、クイーンもブローチもプレゼントしてくれたの!」

 浮かれていたメレディスはいつになく饒舌だった。


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