今宵は天使と輪舞曲を。

「クイーンっていうのはわたしが昔飼っていた馬で、ブローチも叔母から取り上げられてしまったのだけれど、彼が取り戻してくれたのよ! 今まで辛かったことはたくさんあったけれど、それ以上にも増して嬉しいことって生きているとあるのね。それから――男の人と愛を交わすのはすごく気持ちいいことなのね。初めは痛かったけれど、少しずつ気持ちがよくなっていって……それから――」

 昼間、ラファエルからプロポーズを受けたことを話していくメレディスだが、少しずつ違和感を感じた。とにかく返事がないのだ。
 常なら、キャロラインは先を急かし、一緒になって興奮しているところなのに今はそれがない。おかしいと思ったメレディスが振り返ると、そこにはなんと、話題に上がっている彼――ラファエルがいるではないか。

 メレディスがてっきりキャロラインだと思い込み話していた相手はまさかのラファエルだったのだ。
 メレディスはあまりにも驚きすぎていて固まってしまう。
 その間にも彼はとても優雅な身のこなしだった。ドアノブの鍵を閉めるとすぐさまメレディスの隣に腰掛けた。

「そんなことを言ってくれると男冥利に尽きるね」
「わ、わたし……てっきりキャロラインかと――」

 まさか本人に惚気ていたとは思わず、メレディスはまごついてしまう。心臓が飛び出てしまうのではないかと思うくらい、大きく跳ねていた。


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