今宵は天使と輪舞曲を。

 メレディスと結婚を約束したまではいいが、いつまでも浮かれてはいられない。なにせ彼女を襲った人物は未だ見つからず、野放し状態のままなのだ。この恋に現を抜かしてばかりいては足元を掬われ、彼女を失う可能性だってある。

 それに母親のこともある。レニア・ブラフマンはメレディスがデボネ家だという理由から毛嫌いしている。今のところ母は今結婚に反対だ。
 しかし母にはどうあっても彼女との結婚を祝福してほしい。
 ラファエルは、社交パーティーで垣間見たピッチャー男爵に意見したあの時の彼女は男性の後ろを歩く女性ではなく、母親と同じ気質の持ち主だと思った。キャロラインもそうだったように、きっとメレディスの勇敢な気性を知れば、母も彼女を好きになるに違いない。
 どうあっても母親を説得せねばならない。

 ――明日から忙しくなる。
 ラファエルはほんの少し汗で湿った髪を掻き上げ、深い藍に染まる空を見上げた。



《そのグレーの目に写るのは……。・完》
< 319 / 358 >

この作品をシェア

pagetop