今宵は天使と輪舞曲を。
「ねぇ、ひょっとして兄さんに何か言われたの? 目が真っ赤に腫れているわ」
ついさっきまでつり上がっていた眉尻は下がり、心配そうに尋ねてきた。
キャロラインの反応から察するに、メレディスはラファエルにこっぴどく振られたのだと思ったに違いない。
昨夜、ラファエルがメレディスが居る部屋までやって来て、キャロラインの隣の部屋ではまさか彼に愛撫を受けていたと言えるわけもない。
しかもここは共通の通路であり、誰に聞かれるかも判らないのだ。メレディスはキャロラインにどう打ち明けるべきかを迷っていると、彼女は突然口を閉ざし、メレディスを問い質すのを止めると踵を返した。
「キャロライン? 貴女何処に行くつもり?」
内心慌てるメレディスに、キャロラインは鼻息を荒くした。肩は強ばり、いかにもご立腹だ。
「決まっているわ! ラファエルに談判しに行くの!! メレディスを振るなんて考えられない愚か者だわ!」
いつになく声も大きい。メレディスは慌てて進み出ると、前を行くキャロラインの足を止めた。
「ちょっと待ってちょうだい!」
「何を待つ必要があるの? 思わせぶりな態度をして親友を傷つけるなんて!」
キャロラインは自分を本気で心配してくれている。それが嬉しい反面、ラファエルと想いが通じ合ったことをどう打ち明ければ良いのかますます分からなくなってしまう。
メレディスはキャロラインを必死に宥めるも、彼女はまったく聞く耳を持たない。誤解を解く方法を考えている最中、渦中の人物がやって来た。