今宵は天使と輪舞曲を。
そんなメレディスの形相は今にもラファエルを殴り飛ばしてしまいそうなほどの殺気を含んでいた。ラファエルは茶目っ気たっぷりの表情を作ったまま両手を上げて降参の意を示した。
「まあ! 貴方がわたしに打ち明けてくれなかったのはそういうことだったの? 薄々思っていたけれど――」
キャロラインの眉間に集められた皺はより深みを増す。彼女はさらに続けた。
「ええ、そうね。まさかわたしがメレディスの部屋を訪れている間にも、貴方たちはお互いの関係性を深めていたとは口が裂けても言えないわよね」
彼女は首を左右に振り、大袈裟なため息をついてみせた。
もう止めてほしい。穴があったら入りたい。
全身の体温が上昇している。今の自分を傍から見れば、さぞや顔が真っ赤になっていることだろう。
メレディスは今ほど心の底からこの場から逃げたいと思ったのことはなかった。そんなメレディスの願いが通じたのか、ベスがやって来た。
「ああ、ラファエル様。皆様もこちらでございましたか。朝食の用意が出来ました。旦那様たちがお待ちです」
ベスはほっとした面持ちで声をかけた。
たしかに、メレディスは二人から繰り出されるこの会話を早く終わらせたいと思った。しかしこの場をくぐり抜けるための手段はそうではない。――それというのも、朝食にはデボネ家はもちろん、ブラフマン家全員が集う。何も知らない六人は――エミリアは特に癇癪を起こしているに違いない。