今宵は天使と輪舞曲を。

 だからメレディスはけっしてこの結果を恥じてはいなかった。愛する男性に抱かれたのは自分にとってかけがえのない出来事なのだから――。
 そしてメレディスの想いはラファエルも同じだったようだ。彼は母親に揺るぎない視線を向けた。その目はどこまでも澄み渡る深いエメラルドグリーンをしている。決意と自信。それらを秘めた強い眼差しでもあった。

「いえ、ぼくの身勝手な振る舞いの結果です」
「それは、どういうことですか?」
 ラファエルの言葉にレニアは片方の眉をつり上げ、尋ねた。
「昨日、ミス・トスカにプロボーズし、結婚の承諾をいただきました」
「それは正気ですの?」
 ラファエルの言葉に驚き、声を上げたのはエミリアだ。それからジョーンは悲鳴にも似た耳障りな声を上げ、ヘルミナは口を開け、驚きを隠せない様子だ。

 レニアに至っては眉根に深い皺を刻み、ただ沈黙を守っていた。表情や反応からして彼女はなんとなくこの結果を予測していたようにも見える。

 そしてラファエルは続けた。
「彼女にはユーモアと動物を思いやる優しい心。そして美しくも気高い気質を持っています。その心に惹かれました」

「ミス・トスカ、君に尋ねたい。君は息子ラファエルとのことをどう考えているかね?」
 モーリスは飛び交う批判の声を打ち消し、静かに尋ねた。


< 328 / 346 >

この作品をシェア

pagetop