今宵は天使と輪舞曲を。
彼は静けさと凛々しさの両方を併せ持った男性だと彼女は思った。
その美しい彼は今、こちらの様子をじっと窺っている。
その目は真っ直ぐこちらを射貫くように向けられていて、けっして好意的とはいえない。きっと彼は見窄らしい娘が愛する妹を嘲ったのを見て侮辱されたと思ったに違いない。
わたしはどこに居ても、何をしても他人を不快にさせる。
美しい男性から鋭い視線を投げかけられ、メレディスはすっかり居心地が悪くなっていた。
先ほどまで聞こえていたブラフマン家への感嘆と熱意のこもった周囲の声は薄れ、この世界にただひとりきりでいるかのような感覚にさえも陥ってしまう。
いったい、自分はどうしてしまったのだろう。
彼に見られているという、ただそれだけで体中のすべてが熱を帯びはじめている。
けれども彼の視線はけっして好意的なものではない。
耐えきれなくなったメレディスは緩んでしまった口元に力を入れ、無作法だと思いつつも彼から視線を外した。
けれども無作法はすでにしてしまっている。なにせ貴族たちの中でも一目置かれている彼らを前にして笑ってしまったのだから。
幼くして家族を失い、壁際にいるこんな陰気な娘に笑われるなど屈辱以外の何ものでもないだろう。
だからメレディスがさらに無作法をしたとしても、どうということはない。
それはエミリアたちにとっても同じだ。