今宵は天使と輪舞曲を。
けたたましい耳障りな声の主人たちが消えると一気に静寂が食堂を包み込んだ。
レディー・ブラフマンは眉間に手を当て、項垂れている。
「もう決めたことなんです」
デボネ家が退出した後、ラファエルは口を開き、静寂を破った。しかし依然として重い空気はこの部屋に充満している。メレディスは、今だけはどんなに愛くるしい小鳥がこの部屋に訪れようともけっしてこの重たい空気を消し去ることは困難だろうと思った。
「わたしは賛成よ!」
そんな重い空気をはね除けるように、突然明るい声が放たれた。
彼女の声が広い食堂に木霊する。
「キャロライン、貴女には尋ねてはおりません」
レディー・ブラフマンは彼女に視線を合わせず、未だ頭を抱えたまま――けれども冷水を浴びせるが如くにぴしゃりと言ってのけた。
とはいえ、流石はブラフマン家の人間だ。キャロラインは懲りずに顔を上げ、さらに声を張り上げて抗議する。
「どうして? わたしにも関係があることよ。それに、二人はもう愛し合ってしまったのよ? ここでわたしたちがどうこういう権利はないと思うの。もし仮に二人を引き裂いた後、メレディスのお腹に子供が宿ってしまっていたらどうなるの? きっとわたしたちは社交界で後ろ指をさされて生きていくことになるわね。まだわたしは社交界デビューしたばかりなのに……」
キャロラインはわざとらしいため息を吐き、残念そうにそう口にした。