今宵は天使と輪舞曲を。
愛娘の気持ちを察したモーリスは優しく彼女を宥めた。キャロラインの気持ちは分かるが、しかしメレディスはデボネ家に引き取られている。彼女たちをブラフマン家に招待した以上、蔑ろにすることは許されない。相手がどんな人間であれ、平等に振る舞うのは経営者としての考え方だろう。
その考え方こそが長きにわたるブラフマン家という家系を守り抜いてきたものだとメレディスは思った。
どちらにせよブラフマン伯爵から叔母たちを誘わなければ自分たちが蔑ろにされたとメレディスに当たるのだ。
それでなくともメレディスはラファエルからのプロポーズを受けた。彼ら兄弟のどちらかを愛娘ジョーンの夫にと狙っていたエミリアにとっては予想外の事態になっている。
意識を取り戻せば相当癇癪を起こすだろう。メレディスにとっては十分危うい関係だ。
ラファエルは守ってくれると言ったが限度があるのもたしか。彼女たちはこれからどんな厭がらせを仕掛けてくるのだろうか。
しかしそれも、ミスター・ブラフマンが誘うことによってエミリアたちは気を良くする可能性もあるのだ。
なにせ長男のグランはまだ身を固めていない。彼女たちの標的がグランに向かう確率は高い。花嫁の座は残り一枠。
躍起になった彼女たちがいったいどんなアプローチを仕掛けるのかは大体見当はつくが――。
「今日からぼくの身の周りは騒がしくなるんだろうな……」
グランもメレディスと同じことを考えていたのか。彼は目をぐるりと一蹴させた。