今宵は天使と輪舞曲を。
「わかりました」
メレディスは覚悟を決めて頷いた。
「明後日、朝食後はいかがかしら?」
レディー・ブラフマンは大袈裟に首を横に振った後、口を開いた。
メレディスはグランに対してどうしても気が引けてしまう。ラファエルのプロポーズを引き受けたせいで彼にも迷惑がかかってしまうのだ。
「ふむ、明後日ならぼくも都合が良い」
メレディスに向かって茶目っ気にひとつウインクすると、グランも頷いた。
「よし、決まりだな」
モーリスは後ろに控えている家令に乗馬のことをデボネ家に伝えるよう命じた。
――ブラフマン夫妻が食堂を出た後、メレディスは大きなため息をついた。
ただでさえ自分は場違いな伯爵家に滞在しているのに、彼らの前に立つと余計に気を張ってしまう。
メレディスにとって、社交界では常に蚊帳の外だったから、伯爵や伯爵夫人と会話をするこういう経験がないのだ。
「わたし、レディー・ブラフマンを説得する自信がないわ」
「あら、いつも通りの貴女なら大丈夫よ! だってわたしはそういう貴女が大好きになったんだもの!」
「まったくその通りだね、それに君はとても意思が強い。母さんはそういう女性が好きなんだ。きっとすぐに君を好きになるよ」
「大丈夫、肩の力を抜いて。ぼくたちも君をサポートするよ。もっともぼくの場合では違う意味でのサポートになりそうだが……」
「あら、きっと兄さんが一番活躍するわね」
キャロラインは楽しげに声を上げて笑っている。