今宵は天使と輪舞曲を。
けれどもメレディスにはキャロラインと一緒になって笑えなかった。
「グラン、ごめんなさい。まさかこんなことになるなんて想像していなくて……」
「う~ん、その点だが、どこかの誰かさんが思惑通りに運ばせた結果だろうね」
グランの視線の先は弟のラファエルにある。
彼は悪びれることなく肩を窄めてみせた。
「そら見たことか。当人はこの調子だ。君は巻き込まれただけだ。気にしなくても良い」
「ありがとうグラン、それにキャロライン」
「君はクイーンと走りたいだろう? これから女王様の餌やりとコンディションを見に行こうか」
「ええ、是非ともお願いしたいわ。わたし、クイーンと再会できて本当に嬉しいのよ!」
メレディスはうっとりとした声でラファエルに感謝した。
「ああ、分かっているよ」
「ねぇ、クイーンって?」
「わたしの女王様なの。昔はわたしの馬だったんだけど叔母に売られてしまったのよ。昨日、ラファエルが会わせてくれて、それにこのブローチも取り返してくれたの」
メレディスは胸元にあるブローチを手に取ってキャロラインに見せた。
細やかな装飾が入った金のブローチの真ん中にはエメラルドが嵌め込まれている。
「綺麗なブローチね」
「ありがとう、両親の形見なの」
「ますます素敵ね。ねぇ、これからわたしも一緒に行って良いかしら? メレディスの女王様を見たいわ!」
「もちろんよ! とても綺麗で賢い子なの」