今宵は天使と輪舞曲を。

「しかしラファエル、そうなると彼女の見張りはどうする? ぼくは当分レディー・デボネにつけ回される羽目になるだろうからね」
「彼女の目的がメレディスなら、とりあえずぼくが傍にいる」
「二人して何を話しているの? 彼女(・・)って?」
 キャロラインが尋ねた。
「いや、こっちの話だ」
 グランは肩を竦めて答えた。
「ラファエル……」
 メレディスもラファエルに尋ねると、やはりグラン同様話そうとしない。
「何でもないよ。さあ、クイーンの所に行こう」
 ラファエルとグランは間違いなく何かを隠している。
 けれどもメレディスは敢えてそれ以上言及しないことにした。
 彼を信じているからだ。いつかはきっと話してくれる。少し前までは誰も信じられなかった彼女にとって、それはとても大きな変化だった。
 メレディスはラファエルを愛しているから――。

 もう二度と目にすることさえできないと思っていたブローチも愛馬も、自分の手の届く所範囲にある。彼女にとってそのことがとても嬉しかった。
 そして何より、怖じ気づいて丸くなりそうになる背中をそっと押してくれる男性の存在も、だ。
 ラファエル・ブラフマンの存在はもはやメレディスにとって居なくてはならないかけがえのない人になった。





《反対と提案・完》
< 336 / 348 >

この作品をシェア

pagetop