今宵は天使と輪舞曲を。
彼女たちにとって、メレディスは自分たちの存在を高めるだけのお飾りに過ぎない。たとえメレディスがブラフマン家から睨まれたとしても、彼女たちには何の支障も来さない。
メレディスに対する人々の扱い方は二通りに分けられる。
あたかもこの世界に存在すらしていないかのように見るか、あるいは、もっとも穢れきった汚物のように見下すか、だ。
そして彼は後者を選択した。
彼らは誰ひとりとしてメレディスを対等に扱おうとしない。それはすでに分かりきったこと。だから自分の存在価値を他人に求めてはいけないと、メレディスは自分に言い聞かせた。自分を宥めようと生み出した答えは、けれども結果としてメレディス本人を苦しめる。
両親が亡き後はもはや誰も自分を必要としてくれない。その思いがメレディスの胸を痛めつける。
――苦しい。
世界中の人々に必要とされたいなんて贅沢は言わない。ひとりでいい。たったひとり、この世界にメレディスが必要だと言ってくれる人がいてくれさえすれば――。
その人がいるだけでどんなに心が休まるだろう。どんなに励まされることだろう。
けれども自分はただの没落貴族であり、メイドの真似事しかこなせない薄汚い娘。
こんな自分でも必要としてくれる男性が現れてくれるのではないかと有りもしない期待に胸を膨らませるなんてどうかしている。
メレディスは華々しい世界から自分を遠ざけるために目を閉じた。