今宵は天使と輪舞曲を。
それなのに、深みのある金色の髪をしたハンサムな男性が瞼の裏に焼け付いて離れない。
たったひと目、彼を見ただけなのに、メレディスの心の中には彼が居座ってしまった。
彼から逃れれば引くと思っていた熱が消えない。
体は依然として発火するような熱を帯びている。
メレディスはいまだ胸の高鳴りを感じていた。
もう少し。
あとひと目でいい。
彼を見たい。
笑いかけてほしいとか知的な会話を交わしたいなんて思わない。
不相応な高望みなんてしない。
ただ、せめて――。
彼の目の色を知りたい。遠巻きからでは知ることのできない目の色を――。
けれども彼はメレディスを毛嫌いしている。
好意をもたれていない相手の目の色を知りたいと思うなんて馬鹿げている。
それでも――。
一度は自分から視線を外したものの、好奇心には勝てなかった。
もう一度、メレディスは階段下へと視線を戻した。
けれどももう彼の目にメレディスは写っていない。彼は歩み寄ってきた紳士や貴婦人たちに耳を傾け、相づちを打っている。
残念なのか、それとも喜んでいいのか、メレディスは複雑な心境だった。しかしそのおかげでハンサムな彼を見ていられるのはたしかだと、彼女は思った。
さすがはブラフマン家だ。会場に下りた彼らは数え切れないほどの人びとに囲まれている。