今宵は天使と輪舞曲を。
§ 11***目まぐるしい変化。
この本の登場人物はまるで自分のようだ。
メレディスはソファーにそっと寄りかかり、深呼吸するとふたたび本の上に視線を落とした。
ベビーシッターをしていた主人公の娘は主人から盗人呼ばわりされた挙げ句に屋敷から追い出された。帰るあてもなく途方に暮れた娘は森中を迷い、立派な屋敷を発見する。中から現れたのはこの世の人間とは思えないほどの美しい男性で、彼は主人公を屋敷に泊める。しかし、そこは巷ではとても有名な呪われた悪魔の棲む屋敷だった。実は彼は倒れた母親のため、道に迷った人間の魂を奪おうとしていたのだ。娘は健気にも足の怪我があるにもかかわらず、彼の母親の看病を買って出た。娘の優しさに触れた彼は自分たちの正体を明かし、この場から逃げるよう伝えたが、ついに母親が目覚めてしまう。牙を剥き出しにして主人公に襲いかかるものの、彼は彼女が母親を看病していたと話すと母親は胸を打たれ、流れた涙は汚れをそぎ落としていく。やがて母親の邪気がすべて消えた時、薄暗い屋敷はひとたび光が包み込む清らかな屋敷へと変化した。主人公は母親に認められ、男と結婚して幸せに暮らしたという。
あんなにラファエルとの仲を反対していたレニアが二人の仲を認め、結婚を許し、さらにはメレディスに対して実の娘のように接してくれるようになったのだ。
書斎で物思いに耽っていたメレディスはレニアが自分の母親になってくれることを心から嬉しく思った。