今宵は天使と輪舞曲を。
一度は思い描いてしまった理想の家族の中に自分も居るのだと思うだけで胸が膨らみ口元が綻んでしまう。
メレディスは信じられない気持ちでいっぱいだった。
今朝はとても静かな朝食だった。デボネ家の人間はブラフマン伯爵と夫人の監視の下、ただ粛々とスープやパンに口を運ぶ。中でも今まで花婿捜しだと意気込んでいたエミリアとジョーンの気の沈む様はとても見物で、グランやラファエルは流石で、表情ひとつ崩さなかったが、末娘のキャロラインはこちらへ目配せしてくすくすと笑う無邪気な姿にメレディスもつられそうになったから、どうにか笑いを抑えるのに必死だった。
メレディスには心優しい親友も、父や母と呼べる人もできた。
これほど嬉しいことは両親を失って以来、あっただろうか。
「何を読んでいるんだい?」
メレディスがこれ以上のない幸福を感じていると、ふいに後ろから声を掛けられ、びっくりして小さな声を上げた。
「ぼくの方がハンサムだと思うけれど」
彼が目を止めた場面はちょうど二人が出会ったシーンだったらしい。悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「それはどうかしら」
メレディスは自分が没頭して読んでいた本の内容を読まれたことに内心恥ずかしくてたまらないものの、見透かされたくなくて挑戦的に顔を上げるとつんと顎を突き出した。
メレディスが挑むように話せば、次に動いたのはラファエルだった。彼の手がドレス越しからメレディスの肉体をなぞる。
「ラファエル、わたし……」
口を開くと薄い唇がメレディスを塞ぐ。