今宵は天使と輪舞曲を。

 ブラフマン家といえば見目麗しいだけでなく、身分も金も相応にある。彼らは常に人の目を惹き、スキャンダルがつきまとう。だから人々の待望の目は恐ろしいほどブラフマン家に向けられるのだ。

 当然、何の取り柄もない見窄らしいメレディスにはハンサムな彼を不愉快にさせることはできても気を引く事なんてできやしない。


 だからこそ、時が過ぎるのも忘れて彼に見惚れることができる。

 メレディスは自分の立場をきちんとわきまえている。彼らに話しかけるなんてもってのほかだ。


 どれくらいの時間を壁に引っ付いたまま過ごしていただろう。メレディスは会場に流れている音楽が三拍子に変わっていることに気がついた。


 まずはキャロラインがモーリスに連れられて中央に躍り出た。人々は皆、今夜の主役であるキャロラインのために十分に踊れる空間を空けた。

 会場に流れる軽やかなリズムに従って若々しい彼女が舞う。

 その足取りは繊細で、大胆だ。三拍子からなる曲に合わせて踊る彼女は人々を惹きつけ、離さない。メレディスも唾を飲み込むと食い入るように彼女を見つめた。


 虹色に輝くシャンデリアの下で踊る彼女の肌は真珠のように透明な白をしている。彼女が動くそのたびにドレスについている明るいオレンジ色のレースがひらひらと舞う。

 まるで彼女は美しい花々を移りゆく蝶のようだ。
 なんと可憐で愛らしいのだろう。


< 36 / 358 >

この作品をシェア

pagetop