今宵は天使と輪舞曲を。

 いったいどこで育て方を間違えてしまったのだろう。性格も、容姿だって流石は自分の息子だと胸を張って言えるほど申し分ないはずなのに。

 レディー・レニア・ブラフマンの容姿は完璧だった。

 頭の上の方でしっかりとまとめ上げられた艶やかな金髪。長い睫毛に縁取られた緑色の大きな目と形のよい唇。細いウエストも結婚当初のまま、三児の母になった彼女は今もなお、昔と変わらず美しい容姿をしていた。


 そして息子たちもまた美しかった。



 三二歳の長男グランはブラフマン家一の長身で、襟足まで短く切り揃えられた父親譲りの豊かな黒髪が健康的なオリーブ色の肌を引き立てている。

 瞳の色はレニアと夫の中間にあたるモスグリーン色を引き継いだ。

 意思が強そうな太めの眉と二重の目。それから顔の中心にある鷲鼻と大きな薄い唇、角張った輪郭は彼の厳格な性格のありのままを表現している。

 グランはけっして声を上げて笑うタイプではないが、冗談は通じるし紳士たる大器も持っている。

 何より、彼は従者からの信頼も厚く、立派な実業家へと成長を遂げていた。




 それからレニアはテーブルを挟んだ先に座っている次男のラファエルを見やる。

 グランほど厳格な雰囲気を持たないが背も高く、なかなかの美丈夫だ。

 彼はどことなく甘いマスクがある。

 ラファエルはレニアの目の色を受け継いでいた。

 流れるような高い鼻梁の下にある唇は常に弧を描き、淑女たちを惑わす。

 象牙色の肌はなめらかで、肉体も若々しく張りがあり、自信に満ちている。

 襟足よりも少し長めの豊かな金髪はやや深みのある色合いを見せ、引き締まった顎はさらに美青年っぷりを発揮している。


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