今宵は天使と輪舞曲を。

 分かったでしょう? と言いたげな彼女はにっこり笑った。

 けれどもメレディスは彼女が言うようにダンスをするという意見には賛同できなかった。

「わたしは……ほら貴方のように可憐でも愛らしくもないわ。きっと誰もわたしと踊りたいとは思わないでしょう」

 メレディスは肩を竦め、ダンスひとつも踊れない自分を責めた。

 自分もできるなら紳士とあの場に立ちたいと願っている。けれども自分はあの場に立つための教養も何も教わっていない。

 それに、自分の容姿だってそうだ。
 着ているものは貴族のドレスでも、本人がそれに伴っていない。
 荒れた肌に手入れも行き届いていないぼさぼさの髪。見るからに不健康そうな青白い顔と骨と皮だけの体――。

 自分はキャロラインのように可憐でもなければ従姉のジョーンのように美しくもない。

 そんな自分ができることと言えば、他人を不愉快な気分にさせることだけだ。

 キャロライン・ブラフマンと自分との違いを考えるだけで高揚していた気分が落ちていく。


「そんなことはないわ! だって貴方はすごく綺麗よ」

 キャロラインの言葉に力なく首を振れば、

「わたし、お世辞とか嘘が大嫌いなの」

 キャロラインは顔をしかめ、そして次の瞬間――彼女は綺麗なアンバー色の目を輝かせた。


「ねぇ、ラファエルお兄様もそう思うでしょう?」


 ――えっ?
 キャロラインはいったい誰に同意を求めたの?


 メレディスははっとして彼女の視線を辿った。





 《ハンサムな男性・完》
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