今宵は天使と輪舞曲を。
§ 05***魅力的な彼女。
ラファエルは、中二階の階段に立っている時からずっと壁際にいる女性が気になって仕方がなかった。
それというのも、この屋敷の会場は明るすぎたからだ。部屋中に行き渡った照明はどこにも陰になるような場所を与えない。そして中二階のこの場所はすべてを見渡すことができた。
ラファエルは自分の思い通りにならない相手を金や権力で操る傲慢な貴族が大嫌いだった。加えて、自分よりも裕福で権力のある貴族に対して媚びへつらい、機嫌を取ろうとする輩も、だ。
実際、貴族は殆どがそういった類で形成されていて、この会場に集まった人々も同じようなものだと思っていた。むせ返りそうなほどの自己主張が強すぎる香水の匂いと人々の熱気にはうんざりだ。
とはいえ、彼自身、母レニアが言い出した花嫁探しを全面的に拒否しているわけではない。
兄のグランはどうかは知らないが、ラファエルはこのまま独身を貫きたいわけではなかった。
できるなら、自分も父親のモーリスのように生涯を共にする最愛の妻を伴侶とし、愛する妻との間に子を授かり、あたたかな家庭を築きたいとは常々思っている。
しかし、自分はブラフマンという名を持つ伯爵家の貴族だ。どこにいても何をしても常にスキャンダルが待ち受ける。一般男性が望んでいるものこそが手に入りにくいのも事実だった。
ラファエルはこれまで、媚びてくる女性をうんざりするほど見てきた。