今宵は天使と輪舞曲を。

 ラファエル本人だって自分がどれほど恵まれた容姿をしているのかは知っている。そしていかに裕福であるかも――。おかげで女性たちが向ける視線の意味も知るようになった。

 とにかく彼女たちは思い込みが強すぎた。ラファエルが側にいれば、何の苦労なく裕福な生活ができると思っている。

 彼女たちはいつだって自分だけが特別であることを願っていた。

 そしてラファエルなら、彼女たちの願いを叶えられるのだとも――。

 彼女たちにとって、ラファエルという存在はいかに自分が価値あるものなのかを他人に見せつけるためだけの道具にすぎない。悲しいかな彼女たち自身、ラファエルのことを身に着ける宝石や衣服のようにしか見ていないのだ。

 誰ひとりとしてラファエルの内面を知ろうともしない。彼女らが気にしているのは上っ面ばかりなのだ。

 そんな女性たちの中から花嫁なんて選べるわけがない。

 特に自分を着飾ることにしか興味がない女性とは――。



 だからラファエルは公の場に着くなり庭へ逃げたり人目に付かない場所へ移動して、女性というあらゆる女性から逃げ回っていた。

 たとえ、どんなに愛する母親からの指摘であっても――とにかく自分が愛していない女性とは一緒になるなんて到底不可能だ。

 しかし、ここへきてラファエルの気持ちが少し変化していた。

 少なくとも壁際にいるあの彼女は自分が見てきた女性たちとは違うように思えたのだ。


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