今宵は天使と輪舞曲を。
――そうかと思えば、まるで火傷でもするかのように跳び上がった。
ああ、彼女の目は薄いねずみ色だ!
目の前にいる彼女は目を大きく瞬かせ、信じられないものでも見るかのようにこちらを凝視している。
なんて綺麗な目をしているのだろうか。澄んだ目の色は照明の色や彼女自身の感情で少しずつ変化するようだ。薄いねずみだと思っていた色がほんのり濃い青色に変わっている。
遠目でも分かった色素の薄い金髪は、近くで見ると絹のように細い。他の淑女と同じく頭の上でひとつに束ねている髪は、しかし他の女性にはない色香を感じる。
ラファエルは、細いうなじから飛び出している後れ毛に指を絡ませたい衝動に駆られた。
紅潮している頬から察するに、少なくともこちら側に好意があるのだろう。ラファエルもまさに彼女と同じ気質の好意を持っている。彼女とラファエルが同じ気持ちなのだと思えばたまらなく嬉しく感じる。
ラファエルの心はまるで幼子のように弾む。同時に彼女をもっと驚かせてやりたいとも思った。
「あ、あの……わたし」
狼狽えている姿はまるで狼に狙われた子羊のようだ。緊張を解すためなのか、口内から控え目に飛び出した舌先が下唇から上唇をさっと舐め取った。
小振りだがふっくらとした唇をしている。
彼女の舌に続いて自分も彼女の唇を舐め取りたい。
いや、それだけでは物足りない。