今宵は天使と輪舞曲を。
しかしこのイギリスをより繁栄させ、豊かに活気づかせることこそがラファエルの課せられた使命であると思っている。敷いては領民が安心して棲み心地の好い生活を送っていけるために――。
だからこそ、自分は人と関わり続けなければいけないわけだが、やはり人付き合いを繰り返せば良い面が見える一方で悪い面も見えてくる。特に他人を蹴落とし成り上がろうとする者は自分の采配が間違っているにも関わらず、自分より能力が劣る相手や、あるいは身分の低い相手にはとことんまで無理難題を押しつける。そんな輩がうんざりするほどこの世界にごまんといることも知っている。
他の貴族たちは身分の違いがあってこそ自分がいかに有意義な存在かを知らしめたがっているが、少なくともラファエルはそうではなかった。
ラファエルは、人々は身分と分け隔て無く生活できるよう工面されて当然だと考えていた。たとえば一八〇〇年代の山高帽でもあるように、貴族たちが被っていたものが着々と労働者階級の者でも扱われるようになったのは良い例だ。たとえ中国からの輸入が原因で安価に手に入るようになったとしても、それは時代の変化に相応しいものだと考えている。
それは亜鉛メッキの施された浴槽だって庶民にも与えられるべきだとも思うし、香りの良い石けんも、手に入りにくい高価なコーヒーでさえも彼らには手に入れてしかるべきだと思っている。
身分の差こそが経済を衰退させる要因なのだとラファエルは常々考えていた。