今宵は天使と輪舞曲を。
耳障りのよい厚みのあるしっとりとした低声は、彼が言葉を紡ぐたびにメレディスの耳孔をくすぐった。
それから彼の唇も素敵だった。
メレディスが立ち去り際、彼は男性らしい薄く引き結ばれた大きな口で、彼女の手の甲に口づけたのだ。彼の唇の感触は一夜明けた今でも残っている。
あかぎれだらけの手を隠すにはオーガンディーのグローブは薄くてあまり頼りにはならなかったが、おかげで彼の熱を感じ取ることができた。
たとえそれが紳士としてのありふれた挨拶だったとしても、それでもメレディスの心は躍った。
ああ、彼の唇と重ねることができたなら――。
いったいどんな心地がするのだろう。きっと彼との口づけはとても魅力的に違いない。
もし、彼の唇がメレディスの体のラインをなぞり、余すところなく愛撫されれば、きっとすぐに天国に行ける。ベッドの上で一糸も纏わない二人が互いに体を重ねた姿を想像し、メレディスは呻いた。
みぞおちに熱が灯るのを感じる。
ベッドの上で閉じた両太腿に力がこもる。豊かな想像力に身を任せていると、とたんに甲高い悲鳴と食器が割れる音が隣の調理場から聞こえて思考がストップした。
わたしはいったい何を考えていたのかしら。
朝から男女との関係性についてあらぬことを考えてしまったメレディスは羞恥に襲われた。それと同時に驚きもした。