今宵は天使と輪舞曲を。
当然、馬車の中でも顔面蒼白だった彼女は悲惨なものだった。紳士とのワルツを中断させられたジョーンは元より、ブラフマン家の人間とお近づきになるという目的を達成できなかったエミリアはとても腹を立てていたからだ。
愚かにも彼女たちはヘルミナの体調を気遣うどころか、罵声を浴びせ続けたのだ。
メレディスにとって幸いだったのは、誰と壁に張りついていたのかをエミリアから問い質されずに済んだことだ。
しかしよくもまあ、こういう結果になるだろうことを予想していなかったものだと、メレディスは親子二人にほとほと呆れた。
会場に向かう当初からヘルミナの表情は真っ青で、いかにも体調が悪そうだった。加えて最近では母親から食事制限を受けていたものだから体に栄養が行き渡らない。
誰だって、初対面の人間ですらヘルミナの顔を見れば体調が優れないことなんて一目瞭然だっただろうに――。
そんな今の彼女の体調もやはりというべきか、万全ではない。それどころかさらに悪化しているようにさえ思える。昨夜もこれ以上ないくらい青い顔でげっそりしていたが、今朝はさらに酷い。一晩中戻していた所為でろくに睡眠をとることができなかったようだ。顔に精気がなく、目の下にはくっきりと黒い隈ができている。元は赤色だった唇もこけた頬同様に褐色が悪かった。