今宵は天使と輪舞曲を。
そんな彼女はどうやら食事を作ろうと悪戦苦闘していたようだ。足下にある粉々に割れてしまった食器をどうしたものかと、やって来たメレディスと無惨に砕け散った食器に視線を泳がせ、おろおろと落ち着かない様子だった。
テーブルの上に散乱している大小様々の器に割れた食器。
彼女は食事の制限を受けるくらいなら自分で作ってしまおうと考えたらしい。
たとえば、いつもメレディスがしているような――食材の余り物を工夫して作ったり。あるいは親戚親子の食べ残しを捨てずにこっそり食べたり。
そうなれば誰もメレディスが何を食べたのかなんて分からず仕舞いに終わる。なにせ彼女たちは自分のことばかりを考えている。おかげでメレディスのことをいちいち監視している暇はない。咎めようにも咎められないのだ。
しかしヘルミナはメレディスとは違って食事の準備をしたことがない。だからどうやって調理すればいいのかも、材料の分量も何も分からないのだ。
「わたし、お腹が空いたのよ」
ヘルミナはばつが悪そうに顔を俯ける。ぼそりと呟いた。
「わかったわ。でもしばらくは消化にいいものがいいわね」
メレディスは頷いた。
メレディスは叔母や従姉のジョーンと同じようにヘルミナも好きではなかった。彼女もまた、エミリアやジョーンと同じように振る舞い、メレディスを使用人のように扱き使っていたからだ。
しかし、それはそれ。これはこれだ。