今宵は天使と輪舞曲を。
ヘルミナもいい加減、叔母の呪縛から解放されるべきだ。
彼女がこうなったのもそもそもは叔母の心ない命令の所為だ。彼女の体型を個性として捉えず、姉のようなクローンを作り出そうとする。人間が皆同じ性格や体型なんて有り得ないのに――。
ヘルミナにはヘルミナの人生がある。けっして叔母の人生ではないし、好きにさせるべきだ。
いつまでも叔母の庇護下にいるばかりでは、ヘルミナは自由意思を持てないまま何もできず、彼女の操り人形として一生を終えてしまうことだろう。
「少し待っていて、すぐに作るから」
幸い、オートミールはとても簡単だ。ミルクに浸してただ焼くだけでいい。
食事を作ることに慣れきっているメレディスはあっという間に出来上がったオートミールを器に盛り、ヘルミナに手渡した。
「ありがとう。自室でゆっくり食べることにするわ。それから……」
途中まで言いかけて床の上で無惨な姿となった食器を見たヘルミナは顔を曇らせた。
「大丈夫よ、後片づけはわたしがしておくわ」
メレディスは自分の用事がまたひとつ増えたことをほんの少し腹を立てたが、彼女を責める気になれなかった。
メレディスだってヘルミナと同じでけっして万全な体調とはいえない。けれども今の彼女よりはずっとましなことは確かだ。
とにかく、無言で去っていくヘルミナの足取りが重そうだ。