今宵は天使と輪舞曲を。
おかしなことに、エミリアは昨夜、ヘルミナの一件で苦労したはずなのに、少しも懲りていなかった。彼女はどうあっても娘をブラフマン家の人間と結婚させる気でいるのだ。
「さあさあ、いつまでもむくれてないで」
エミリアはいまだしかめ面をしている愛娘の華奢な肩を優しく叩いた後、同じ広間にいるはずのメレディスを大声で呼んだ。
エミリアはとても自分勝手だ。メレディスを呼ぶ時は決まって彼女にとって不都合な場合のみなのだ。
「今日の午後には骨董商が来る予定です。品物を渡してお金に換えなさい」
ああ、また……。
両親と過ごした懐かしい思い出の品がなくなっていく……。
彼女たちの賃金の使い方はことごとく荒い。悲しみに捕らわれたメレディスの体はずっしりと重くなる。同意もせずに口を引き結んでいると、「あ、そうそう!」とジョーンは思い立ったかのようにいっそう明るい声を上げた。
彼女の声音を聞くだけで、メレディスはさらに追い込まれたような気分になる。それもそのはず、彼女の声がワントーン上がるのは決まってメレディスを陥れる算段を思いついた時だからだ。彼女はこうやって母親に打ち砕かれた自尊心を満足させるため、メレディスで憂さ晴らしするのだ。
「ねぇ、これを売りましょうよ、お母様!」
ジョーンはスカートのポケットから手のひらに乗るほどの小さな何かを取り出した。