今宵は天使と輪舞曲を。
顔を真っ赤にして怒り狂う母親を前に、キャロラインは彼女の言葉を気にもせずにふたつ返事で軽く受け流してみせた。
彼女は二人の兄たちよりもずっと図太い性格の持ち主だったのだ。
彼女は見た目だけではなく性格も母レニアにそっくりだ。そこらへんにいる男子よりもよっぽど根性が座っている。
そして少々お転婆でもある。
レニアは問題が多すぎる子供たちをそれぞれ見やって首を大きく振ると、また深いため息をついた。
頭痛がますますひどくなるばかりだ。
「ああ、いったいどうしてこんなことになってしまったのかしら……」
レニアは問題が多すぎる三人の子供のことで頭を抱えた。テーブルの前で項垂れる。
「母さん、嘆いてもはじまらないよ。兄さんもぼくも仕事が好きなんだ」
ラファエルが答えると、レニアはいっそう大きなため息をついた。
「三人とも容姿は申し分ないくらいなのに……」
レニアはぼやいた。
しかし二人の息子はもう逃げられない。なにせ今回は末娘キャロラインの社交界デビューという大切な一環があるのだから。
けれどもそれはただの前置きにすぎない。
レニアにとっては息子たちの花嫁選びこそがそもそもの土台だった。
何としても跡継ぎが必要だ。親子八代にもわたって築き上げたブラフマン家をここで絶やすわけにはいかない。
次こそは息子たちの目にかなう女性を、とレニアは切実に願っていた。
《問題多きブラフマン伯爵家・完》