今宵は天使と輪舞曲を。

 ラファエルは、特に自分の外見にしか興味のない女性が苦手だった。それだけに男女の関係が煩わしい。だから後を引かない相手とベッドを共にするのが常だった。

 それが今はどうだろう。

 あんなに女性を拒んでいたことが嘘のようだ。今回ばかりは勝手が違う。メレディス・トスカでなければラファエルの欲望は満たされないのだ。

 いったいぼくはどうしてしまったんだろう。


 たしかに、彼女は他の女性とは違うように感じた。

 それというのも、ダンスパーティーは女性にとって自分がいかに美しいのかを他人に見せつける絶好の機会だ。それなのに、彼女はあまり目立たない壁に張り付いてばかりだった。

 キャロラインの話によれば、彼女は十の歳に両親を亡くし、引き取られた叔母からは爪弾きにされている。身の上はとても悲劇的だ。そういうこともあって、不遇な人生を送っている彼女は少々卑屈になっている。しかし、ひとたび言葉を交わせばどうだろう。

 ラファエルが嫌う女性特有の嫌味や陰口なんてひとつも耳にしなかった。

 それどころか、彼女の会話はところどころユーモアが入り混じっていた。

 他の淑女にはない、彼女の可愛らしい性格を垣間見た気がしたのだ。


 ――いや、彼女が気になる理由はそれだけではない。彼女の微笑はラファエルの心を落ち着かなくさせる。それに彼女が見せる表情はとても豊かだ。


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