今宵は天使と輪舞曲を。

 相変わらず彼女は美しい。やはり、彼女にはどこかラファエルの目を惹きつけるものがある。しかし――。

 彼女の様子を見たラファエルは顔をしかめた。

 気のせいだろうか、以前に会った時よりも顔色が優れないように思える。それは彼女の着ている青白いドレスが関係しているのだろうか。

 早く彼女の所へ行きたいものの、しかし今自分たちは注目を浴びている。ラファエルが下手に動けばこの場にいる貴族たちから冷やかしの目で見られることは必至だ。そうなれば彼女に迷惑がかかるだろうし、何より彼女の親戚が黙ってはいまい。もしも、キャロラインが手に入れた情報が真実であるならば、今よりもずっと彼女の立場が悪くなる。

 なにせ自分はブラフマン家の人間で、しかも彼女の叔母が娘の夫にと狙う玉の輿候補であるともいえる。その自分と彼女が話題に上れば、おそらくは彼女に当たり散らし、下手をすれば今後社交界に出られないよう仕向けてくる可能性がある。そうなればラファエルは今後、二度と彼女と会話する機会を失うだろう。

 いや、それどころではない。体罰を受ける可能性だってある。

 そこまで考えた時、ラファエルは頭打ちを食らった。

 それというのもラファエルとキャロラインは前回の社交界で彼女と会話を交わしている。心ない叔母に自分たちがいた事実を知られてしまえば、嫉妬と侮辱に駆られた叔母たち親戚は彼女を虐げるに違いない。


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