今宵は天使と輪舞曲を。
ピッチャー卿は従兄のベオルフにも匹敵するくらい、様々な女性とのスキャンダルが持ち上がっている。自信に満ちた笑顔で歯の浮くような芝居がかった科白は、これまで彼が何人もの女性を口説いてきたのだろう。十分に色恋沙汰を熟知している証拠だ。
彼は、女性はその場にいるだけで十分美しいと、暗にそう告げた。
たしかに、一般的な教養を身につけた女性なら、彼の言葉は砂糖菓子のように甘い誘惑になるかもしれない。
ここでラファエルが考える一般的な女性とはもちろん、常に悪口を言って相手を批判し、他人を蹴落とす女性のことである。
しかしどうにもミス・トスカは他の女性とは違う気がする。彼女は貴族にはないユーモアがある。他人を蹴落とす言葉を投げかける女性には彼女からは感じない。
つまり彼女もまた、ラファエルと同じこちら側の人間なのではないかと思った。そしてラファエルの見解は見事に当たった。
ピッチャー卿はこれでまたひとりの女性の心を奪ったと思い込んでいるようだ。
しかしラファエルは彼女の片方の眉がぴりりと上がったのを見逃さなかった。
やはり彼女も自分と考え方が似ている。
「それはわたしに貴方の付き添いを求めているということ?」
もともと眉根の間に刻まれていた深い皺がさらに濃くなっていく……。