今宵は天使と輪舞曲を。
§ 08***甘やかな口づけ。
叔母はいったいどれくらいの会場を何度こうして行き来すれば気が済むのだろう。
ルイス・ピッチャーがメレディスの隣にやって来たのは繰り返される叔母と従姉妹のやり取りを壁際でうんざりしながら見ていた時のことだった。
ピッチャーが彼女の隣にあっさりやって来たことから察するに、どうやら彼はメレディスに嫉妬心を抱かせる計画を取りやめにしたらしい。
でも男性を知るにはちょうどいい機会かもしれない。
いつものメレディスなら、素っ気ない態度のまま彼が去るのを待つばかりだったが、今夜のメレディスは少し違った。とにかくラファエル・ブラフマンのことを知りたくて仕様がなかった。男性が何を考え、何を思っているのかに興味をもったからだ。
だからメレディスは静かに口を開いた。
「貴方はわたしに何を望むの?」
男性という存在はいったい女性に何を望むのだろうか。
「何も望まないよ。君は何もしなくてもいい。側にいるだけで十分なんだよ」
何もしなくともいいは、聞こえは良いが、つまり彼が言いたいのは、何もするな。ということだ。
傲慢なピッチャーにはほとほと呆れる。メレディスは彼の心ない言葉と不躾な態度に嫌気が差していた。ほくそ笑んでいるその顔を苦痛に変えてやりたいと思った。
「ああ、メレディス。君はなんて美しいんだ」