今宵は天使と輪舞曲を。
大袈裟な身振り手振りで彼はメレディスを褒めちぎる。それがかえって胡散臭さが増すのだが、彼はそのことに気づいていない。
「やあ、すっかり待たせてしまったね」
彼の手がメレディスの腰に回りそうになった時だ。長身の男性に声を掛けられた。
ああ、彼は天使のように美しい。肩まで伸びた濃い金髪に涼やかな深緑色に縁取られた双眸。
ラファエル・ブラフマン伯爵だ。
深い緑の目に見つめられただけで、全身の生毛が逆立ち、肌がちりちりする。メレディスの胸のうちすべてを見透かされそうな感覚に襲われる。
相変わらず彼はメレディスに多大な影響を与える。
「ミス・トスカ。飲み物を持ってきたよ」
ラファエルは魅惑的な笑みを浮かべ、ワイングラスを掲げた。
わたしは彼にワインを注文したかしら?
「わ、わたし……」
返答に困ったメレディスが言葉を詰まらせると、
「君は飲みたがっていたはずだ」
ラファエルは気取られるよう、ピッチャーの方にちらりと目だけを動かしてみせた。どうやら彼はメレディスの救世主になってくれるらしい。
果たしてこれが最善の策かなのかは分からないが、今に至っては迷っている暇なんてない。
メレディスは一刻も早くピッチャーと離れたかった。
なにせ彼女は三日前の晩からずっとラファエルと親密な関係になりたいと望んでいたのだから。