今宵は天使と輪舞曲を。

 どんなに理想を追い求めてもこれらの現実は変わらない。望みを抱けば抱いた分、悲しい現実に打ちのめされるだけ。

 どう足掻いても所詮は自分の力なんて大したことはない。抗うだけ無駄というものだ。
 メレディスは自分がいかに非力な存在であるかを思い知らされてきた。

 自嘲気味になれば視線は足下に下がる。同時に胸の奥を締めつけるような痛みが襲う。胸の痛みをどうにか和らげようと目を閉ざし、あたかも何も感じていないよう振る舞う。そうすればこの痛みに集中することもない。意識は抗うのを止め、麻痺させることができる。これもまた、メレディスが親戚に引き取られてからの四年間で培った自分の身を守る方法でもあった。


「そうじゃない。単に不幸が重なっただけで君への評価ではないはずだ!」

 未だ怒りを含ませたラファエルの声に、メレディスははっとして顔を上げた。彼は一度口を噤むと、気まずそうに口を開いた。


「……つまり、君はとても魅力的な女性だ」

 この科白は今夜だけでも二度目になる。ルイス・ピッチャーと同じ文句だった。彼はそれに気づいたのか、不快そうに顔をしかめた。しかしメレディスは不思議とピッチャーの時のような苛立ちは感じなかった。

 たとえそれがお世辞だったとしても、ラファエルはメレディスを思って発言したのだと十分に理解できたからだ。


「ありがとう。わたしを気遣ってくれているのね」


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