内部破綻の殺人鬼
「坊や」
私はナイフを抜いて、付着した石材のカスを綺麗に払った。
美しく磨いた刃に僅かばかりひびが入ったが、これも彼のためと思えばこんなもの惜しくはない。
「皮肉なものだね。
君は自分より他人を大切に思えるほど優しいのに、その所為で人を殺したがるなんて」
でも結局、彼も自分が可愛いことに変わりはなかったのだ。
辛いからこそ罪に走るにしても、彼にしてはその痛みが恋しくて最終的にはこうして血塗れ。
内面はどうあれ殺人鬼にはかわらない。
刻みこまれた欲求は、決して満たされず渇望を続ける哀れな性よ。
誰か彼の生に終止符を打てたら、君も少しは救われるだろうに…。