HERETICAL KIDS
「ん?」

リュートが、ソファーでくつろいでいると
この部屋の出入り口付近でギシッという音が響いた
リュートは、少し反応をしたが、そちらに視線を向ける素振りは見せない
今、リュートは出入り口に背を向けるように、ソファーに座っている
誰が来たかを確かめるには、振り返らなければ相手を確認できない

「…確かに…オレは『早く帰って来い』とは言ったけどさぁ…」

リュートが話している間に、人影はリュートの背後に移動する
誰がいるのか分かっているのか、リュートはそのまま言葉を続ける

「誰も幻影で帰って来いなんて、言ってねぇよ」

ギロッと相手を睨みつける
リュートが睨みつけた先には、髭の長い老人…首領が立っていた
一見すると、幻影とは全く分からない首領
それを見抜いたリュート…戦闘経験はそれだけ豊富という事か…
それとも、単にリュートの霊力探知能力が優れているのか…
どちらにせよ、リュートが戦闘に関しては優秀であることが分かる

「ジジィ、今何処にいる…」

リュートは、幻影の首領に問いかける
幻影だからと言って、喋れないわけでは無いのだ
操る者の意思と霊力に左右されるのは勿論のことだが…
首領ほどの、実力と霊力があれば幻影に話をさせるなど、造作も無いこと
それを知っているから、リュートは幻影に尋ねる

「幻影なのは、ワシが…身動きがとれんからじゃ…」

ポツリと首領の発した言葉に、リュートはピクッと反応する
それと同時に、リュートの周りを包む空気がザワッと揺れた

「どーゆうことだよ…」

先ほどより、幾分低い声が部屋に響き渡る
実質、天界で一番強いとされる首領が身動きがとれない…と言う
どうゆうことなのか、聞くのは当たり前だろう

「それより、お前を呼んだのは…」
「おい!オレの質問に答え「そのような時間は無い
幻影まで出してココに来た目的は、お前に任務を与えるためじゃ」

リュートの目が驚きで見開かれる
言葉が遮られたことも、怒っていたことも忘れるくらいに驚いている
何故なら、首領から直々に任務を言い渡されることは、ほとんど無く
難易度はどの任務よりも高いから

「任務の内容は、真邪のヒスイを探すことじゃ」
「…しん…じゃの…ひすい?」

今まで聞いたことの無い名称に、首をかしげる
怒りはすっかり忘れ、真剣に話を聞く体勢になっている
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