前世と今～記憶の鎖～

「ほら、眠いなら寝なアカンで」

優希は暁にタオルケットをかけて、トントンと優しくたたく
すると、泣きやみ…ものの数分で暁は夢の世界へ

「…自分が子育てしてどないすんねん…」

ふぅ…と小さくため息を１つつく

（まぁ、この賑やかさが本来の子育て中の家かな…）

暁の頭を、優しく撫でながら、そう思った優希だった
撫でられた暁は、気持ちよさそうな顔をしながら、眠り続ける

「優希ちゃ～ん、ご飯できたわよ～」
「分かった…とりあえず、もうちょっと声の音量下げよか」
「ぁ…」

いつもの調子で、大きめな声で優希を呼びに来た美紗子
優希は、すかさず声量を下げるように言うと、美紗子は慌てたように口を塞ぐ

「ほな、お父さん起こして朝ごはん食べよか」
「そうね♪」
（それにしても、あの大声の中起きてこないお父さんって…）

哲哉の神経はどんなものか…とても気になった優希だった
その後、哲哉を起こし朝食を食べ、仕事に送り出した
時間を持て余している優希は、自室に戻り子ども用のテーブルの前に座る
手帳サイズのノートを取り出し、鉛筆で何やら書き始めた

「優希ちゃん、何書いてるの？」

そこへ、美紗子がやってきた

「日記やで」
「え？」

美紗子は驚いた
前世の記憶があるという事は、話を聞いたので分かっているが
やはり、まだ３歳…という年齢を基準に考えてしまう

「時間無駄に持て余してるしなぁ
それに、最近指先も上手く使えるようになってきたし、暇つぶしにな
この体、まだ不自由な事が多いんやけど…だいぶ上手く使えるようになってきたんやで」

優希の言うことに、首をかしげる美紗子
自分の体なのに、上手く使えるようになる…とは、どういう事なのか
美紗子にはピンとこない