前世と今~記憶の鎖~
「あ!そこにいたのか!」
「…はぁ…」

優希を見つけ、駆けてくる哲夫
ここで忘れてはいけない
今は鬼ごっこの途中だ…と言うことを
優希がその様子を黙って見ているはずもなく、さっさと逃げる

「!!な、何で逃げるんだよ!」
「今鬼ごっこやろ…」
「ぁ…」

優希に言われ、ハッと気付く哲夫
慌てて優希を追いかけにかかる
ただ走っている今、勿論哲夫が優希との距離を詰めている
そんな事は分かっているのか、優希は後ろを振り返ることなく走る

「つ~か~ま~え~ッ!?!」

優希を捕まえようと、大げさに手を挙げた哲夫
その声に反応し、優希は90度直角に曲がった
目標を失った手は空を切り、バランスを崩して哲夫は派手に転んだ

「…大丈夫?」

転ぶという予想外の展開を引き起こした哲夫に近づく優希
哲夫は器用にも顔面から地面に激突し、ピクリとも動かない

(…大丈夫やないかな…コレ…)
「いたたた…」

ボーっと優希が見ていると、哲夫がゆっくりと起き上がる
ぶつけた顔をさする

「優希、運動神経いいんだなぁ…」
「…?そうかな?」「あぁ、今の瞬発力…凄いと思う」

確かに、3歳にしては良いかもしれない
ただ、それは優希が思考を巡らせ体を動かしているからなのかもしれない
もしかしたら、3歳の身体能力としては普通かもしれないが
皆が考えずに動いているので、出来ないだけかもしれない
考えたところで、正確な答えをくれる人などいないのだが…

「まぁ、どっちでもえぇわ
それより、顔洗ってきたら?」
「?」

優希の言葉に、哲夫は首をかしげる
自分で自分の顔を見ることが出来ないから仕方ないかもしれない
砂まみれになっている…など露ほども思っていないのだろう

「顔…砂まみれやで」
「なに!?」

バッと立ち上がり、トイレへと駆け込んでいった
優希はそれを見送ってから美紗子の元へ行く
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