前世と今~記憶の鎖~
「あら、お父さんは?」
「顔洗いに行っとるわ」
「へ?」

今まで、暁とベンチでのほほんと日光浴をしていた美紗子
暁と会話…と言う名の一方通行な言葉かけをしていたのだ
優希と哲夫の動きなど見てはいなかった
哲夫が優希を見ているから、見る必要も無かっただろう
もっとも、精神が大人な優希は一人でいても平気だろうが…
ともかく、優希と哲夫のやりとりを見ていなかった美紗子には、何故急に哲夫が顔を洗いに行っているのか…理解不能だった

「さっき自分を捕まえようとして、バランス崩して転んだんや
しかも顔面からね
それで顔が砂まみれになったから、顔洗いに行ったんや」
「あら、そうなの
相変わらず、運動神経悪いのねぇ~」

クスクス笑っている美紗子
なるほど、優希の運動神経が良い…というよりも、哲夫の運動神経が悪いと認識して方が良さそうだ
優希は一人勝手に納得し、美紗子の横に座りジュースを飲む
あまり運動した気分はしないが、一応水分補給は必要だろう
精神と体のズレがあるのだから、意識して気を付けなければならない

「う~~…ヒリヒリする…」

3人がのほほんとしていると、哲夫がトイレから戻ってきた
水道水で砂を洗い流した後には、赤い線があちこちに出来上がっていた
小石などで切ったことは一目瞭然、ヒリヒリするのも当たり前だった
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