前世と今～記憶の鎖～

「機能が色々増えてるけど、分からんわけやないから、問題あらへんな！」

そう言いながら、パソコンを操作する優希を見て、哲夫は…

(…こんな３歳児、絶対いないよなぁ…)

改めて、自分の娘が前世の記憶を持っていることを実感した
会話だけだと、ただ口の達者な３歳にも思えなくもない
普通の人は、きっと口を揃えて「オカシイ」と言うだろうが、日常と化しているので違和感が消えかけているのだ
慣れというのは恐ろしいものだ

「ふぁ～…今からパソコン使いたいのは山々やけど…そろそろ昼寝せな…」

優希はウトウトし始める。身体が睡眠を求めているのだ
精神がどれだけ大人でも、身体の求める眠気には勝てないし、勝ったところで良いことなど無いだろう
成長に支障が出るだろうし、幼い身体に無理をさせても得は無い
優希は、さっさと布団に入ると眠ってしまった
眠くなれば勝手に寝るし、目覚ましで起きてくる…本当に手のかからない子どもだ
哲夫は、物音をたてないように、慎重に優希の部屋を出て行った

「ふぁ～…」

優希が目を覚ましたのは、それから２時間くらい経った３時頃だった
まだ覚醒しきらない頭を、ゆっくり動かしながら行動を開始する

「オギャーオギャー！！！！」
「…暁の声は相変わらず大きいなぁ…」

目覚めきってなかった目が、暁の泣き声で冴えた

(時間的に…お腹がすいたんちゃうかな…)

適当な予測をたてながら、リビングに行く
暁の泣き声が部屋いっぱいに響き渡っている
ここまでの音量になれば、騒音と言ってもいいだろう

「ぁ…優希ちゃん起きちゃった？あ～よしよし、何で泣き止まないのかしらぁ～～」

美紗子は一瞬優希を見たが、すぐに暁に視線を戻す
美紗子が暁を抱っこし、あやしているが暁は一向に泣き止まない