前世と今~記憶の鎖~
「は!?見つからなかったぞ!?!」
「こっちはちゃんと知ってるで?シュラやろ?」
「!!!?」

哲夫は自分のキャラ名を当てられ、驚き固まる
頭の中で、必死に優希に当てはまるキャラを探してみる
しかし、浮かんでくる女性は全部ハズレ…彼女たちの前で名前など一言も出してない
遠巻きに聞いたのかもしれない…と思うが、名前をそんなに大声で叫んだ覚えは無い
優希の名前なら、何度も叫んだ記憶はあるが…

「自分の心当たり探してみぃ?」
「う~~~~ん」

一生懸命探してみても、女性キャラでは見当たらない
そう、女性キャラのみ…なら
しかし、1人心当たりがある
チュートリアルから出てきて、哲夫が唯一自己紹介した人物
その人物は、哲夫がゲームから出るまでずっと広場にいた
そして、関西弁…ゲームの中ではさほど珍しくも無いため、気にもしていなかった

「まさか…」
「まさか?」
「ツバサか!!!?」
「そやで、せいか~~い」

優希の肯定に、哲夫はピシリと固まる
そうはあって欲しくなかったみたいだが、現実とは残酷だった

「そんな馬鹿な!!あれは思いっきり少年だったぞ!?!」
「つか、誰が女みたいな露出高い服着るねん」
「おまッ…前世は男だったのか!!?」
「いや、女やけど?」
「!!!!?なら、何で可愛い格好を拒む!!!?」
「動きにくいから」

錯乱状態の父に、優希はハッキリと一言言った
優希の返答に哲夫はガックリと項垂れる
そんな哲夫を、ただ見つめる優希
優希は元から、可愛い服を好まない
今は美紗子の趣味に合わせているが、本当はもっと動きやすい服が望ましい
そのうち、言ってみようかとか考えている今日この頃

(…娘に夢見てたんやなぁ…)

見ているだけだと悪者になった気分になるので、優希は哲夫に近づきポンポンと肩を叩く
哲夫は若干涙目になりつつ、優希を見る

「ま、前世からこんな感じやから、治らん思うで」

ニッコリ笑顔でトドメをさす優希
本人、そのつもりは十分あるのだが、言わずにはいられなかったのだろう
残酷な事実に哲夫は更なるダメージを受けた
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