前世と今~記憶の鎖~
―30分後―

美紗子の病室に優希、哲哉…そして、赤ちゃんの4人がいる
美紗子と哲哉は赤ちゃんの名前をあれこれ考えている
一方、優希も一生懸命考えている

(…どないしょう…思いっきり「陣痛」とか言ってもたなぁ…
誤魔化そうにも、誤魔化されへんよなぁ…どうやって知ったとか考えたかて
あの口調の誤魔化し方なんて思い浮かばへんで…
自分の馬鹿ぁ~~!!!)

静かに椅子に座っているように見えるが、頭の中では大混乱だ
陣痛に倒れた美紗子に言った言葉を思い返す優希は、どう言い訳をしようかと考えるが妙案は浮かばない
こんなことは初めてなのだから、当然と言えば当然だ

「…!きちゃん!……優希ちゃん!」
「うわぁ!?!」

真剣な顔をして考え込む優希を不審に思った美紗子が声をかけていたのだが、自分の思考に入り込んでいた優希は気付かず
3度目の大きな声で、やっと気がついたのだった

「な、な…なに?(ま、まだ、何も言い訳思いついてへんで!!!)」
「赤ちゃんの名前決まったわよ~♪」
「へ…?」

てっきり、何か自分の事を追求されるかとばかり思っていた優希は、予想外の言葉に間抜けな顔になる
そんな優希に気付いているのか、いないのか…美紗子は嬉しそうに話を続ける

「この子の名前は暁(あきら)よ♪賀川暁君よ」
「へぇ~…えぇ名前やなぁ」
「そうだろう!俺が一生懸命寝ずに考えた名前だ!」

何故か得意げに言う哲哉
その言葉に、ふと今朝を思い出す優希

「(確か…なかなか起きてこんかったよな…?)とりあえず、寝てはいたよな?」
「【ギクッ】た、確かに寝てたけど…ほら、言葉のあやだよ!」

3歳の指摘に、慌てふためく哲哉
その様子を、クスクス笑いながら見ている美紗子
微笑ましい光景なのだが、優希が3歳ということが違和感を与える

(…何で3歳の子どもが「陣痛」なんて難しい言葉を…?
何で、大人と張り合えるくらいの言葉を的確に使えるの…?)


その違和感に笑うことをやめ、家であった出来事…そして、今のやり取りを見て美紗子は考える
でも考えても違和感が大きくなるばかりで、答えは出ない
優希に直接聞くしか方法が思い浮かばず、優希に声をかける
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