前世と今~記憶の鎖~
(…何か、前世の記憶を持って生まれてきた理由…今なら分かる気がする…)

優希が前世の記憶を持たずに生まれていたら、きっと大惨事になっている気がする…いや、大惨事になっていただろう…絶対…
恭ちゃんは黙り込んでしまった優希の横で、ボーっと外を眺めている

「恭ちゃんは遊びに行かへんの?」

眠気と戦っているため、いつものように恭ちゃんと遊べる状態ではない
今の優希といても暇だろうと思い、優希がそう尋ねると恭ちゃんは頷く
それは、遊びに行かないという意思表示

「優希ちゃんといる…」
「そっか…面白く無い思うけど…」
「…いいの」
「ふ~ん…(前から思ってたけど…何か懐かれてるよなぁ~)」

これくらいの年代なら、一人に懐くというのもアリか…などと頭で考える
ともかく、行きたくないと言っているのに、無理に放り込むつもりは毛頭ない優希は、再び眠気との戦いをはじめる

(今、7ヶ月やから…最悪8ヶ月までずっと夜泣きかな…あぁ、睡眠時間が…)

先の事を考えて、優希はガクッと肩を落とす
この状況がまだしばらく続くという事実…できれば知りたくなかった…が、前世の記憶を持っていることで気付いてしまった
前世の記憶を持っていなければ、今みたいな状況にはなっていないだろうが…
優希が眠気から解放されたのは、昼寝終了時間だった

「優希ちゃんおかえりなさい♪」
「ただいま…」

子ども園のバスが発着する車乗り場
そこには、近所のお母さんと一緒に美紗子がいた
他の子ども達は、着くなり勢いよく母親の元に駆けていく
そんな中、優希と恭ちゃんはゆっくりと母親の元へ行く

「あ、優希ちゃんのお母さん…ちょっといいですか?」
「はい?」

送迎バスに同乗していた先生に呼ばれ、美紗子は優希を恭ちゃんの母、奈津美(なつみ)に頼み先生の元へと行く

(…何で呼ばれたんやろ?何も変なことせんかったけどな…)

優希は首を傾げながら、美紗子が戻ってくるのを待つ
眠気のせいで、1日の記憶が曖昧だが…何か奇妙な行動をとった覚えは無い
優希が頭を悩ませていると、美紗子が戻ってきた
色々気になるが、奈津美がいるので自宅まで我慢をする
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