前世と今~記憶の鎖~
「ねぇ、優希ちゃん」
「ん?なに??」

美紗子に呼ばれ、哲哉から美紗子に視線を移す優希
そこには、珍しく真面目な顔の美紗子がいた

「優希ちゃん…何か隠してること…ない?」
「!?!(きた!!)」
「…美紗子、急に何言い出すんだ?」

ギクリと肩を震わせる優希
哲哉は、美紗子の言葉に、わけが分からない…と言う風に首をかしげる
それも、そうだろう
この小さい3歳の子がする隠し事など、そんなに大した事ではないはずだ
そこまで真剣な顔をして尋ねる必要性が感じられない

(どうしよう…どうしよう…
正直に前世の記憶あります言うて、それを簡単に信じてもらえるか?
いくら2人が抜けてても、それはまず無いやろ
逆に気味悪がって、雰囲気悪くなるんは嫌やし…どないしたらえぇの!?!?!)

失礼な事を織り交ぜながら、頭の中で大混乱する優希
周りから見れば、ただ呆然と立っているだけに見える
それを見た哲哉は、優希が美紗子の言葉を理解していないと勝手に思った

「美紗子、こんな小さい子どもに、そんな難しい事聞いて分かるわけないだろう?」
「私だって、そう思うわよ
だけど、それじゃ「陣痛」なんて難しい言葉を知っていた事が説明出来ないのよ
それだけじゃない…落ち着いて救急車を呼ぶなんて…普通は出来ないと思うの」
「…確かに…」

美紗子の言い分に、哲哉も納得した
百歩譲って3歳の子が「陣痛」という言葉を知っていた…というのはあり得るとしよう
だが、落ち着いて救急車を呼ぶ…という事は3歳に出来る事だろうか


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