恋愛不向きの彼の愛し方
その空気の澄んだ田園風景が広がる田舎でのんびり育ったせい。


――とまでは言わないが、嘘をつくのが苦手。その上、隠し事などが出来ない。


杏里が言うには、純朴な女という希少な部類に入るらしい。


「そんなに美味しいの?」


ガトーショコラを指差された。


「いる?」


尋ねた私の右手をぐいっと引っ張り、いつの間にか、フォークに刺さったガトーショコラは、杏里の口の中に消えた。


「激うまッ!もし何かあったら、私がちゃんと陸哉さんに説明するから。大丈夫!」


ドンと胸を叩き張り切る杏里を前に、全て平らげた私は、拒否出来るはずもなく、高熱で来れなくなった友達の代わりに、今日だけという条件付きで、歯科医との合コンに強制参加となった。


その日の夜、集まった女の子は、杏里と私。それから杏里の高校時代の友達、紗耶香と舞の二人の計四人。


杏里の友達とあって、気さくだ。
< 4 / 31 >

この作品をシェア

pagetop