半分の心臓
親戚、仕事相手、料理屋の主人、
そしてうちに遊びに来るボクの友人にまで。
 
個人情報が壊れたガマ口からぽろぽろ飛び出す。
 
その情報が正しいか正しくないか、

知らないくせに。
 
黙っていれば相手のほうに勝手に像がつくられてしまう。

後で訂正したとしてももう遅い。

第一印象は父の説明通りの人だ。

いや、それ以前に話に割って入れない弱い男。
 

長い付き合いの友人だからまだ
良いものの初対面の人に対しても
こんな調子だから本当に困る。
 
この人には
自分の情報を与えたくない。
 
車内では話すことがないせいか
父は慰めの言葉を言い出す始末。
 
「悔しいと思う気持ちがあればバネになる」
 
多分、これは彼の格言書の39ページに書いてあるのだろう。
 
同じ台詞を彼の口から
これまでに5回は聞いた。
 
しかも棒読みで。
 
父の慰めの言葉はダイキライだ。
この人は、

自分の経験談以外のことには無頓着で、
目の前にいる相手の気持ちを思いやる気なんてことはない。
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