半分の心臓
入り口付近にいる
拡声器を持っていた体育教師とは別の係員が
「受験票を出し4階に行って下さい」
と声を飛ばす。

まだ生徒じゃないから、敬語?
それとも親も見ているから?
とりあえず、今、言える事は
 
あの体育教師はなんなんだ、ちっとも役に立っていない。
 
ってことだけだ。
 
それを聞いてか聞かずしてか
後ろのほうにいた体育教師の声が聞こえる。
 
「受験票を出し4階へ」
 
拡声器使えよ。
拡声器。
手に持っているそれはなんだ。
 
係員の声とは違い
まるで有名人のお通夜が
あるかのようにちらほらいた人間が
香典の準備をし、次々と吸い込まれていく。
 
ボクらもこの共同お通夜に参加するご遺体達だ。
 
参列者じゃない。
 
バカがいるぞ?
ご遺体並の冷たい目でボクらは 
まるで自分は違うんだと
言わんばかりに
堂々と彼らの後に付いて行く。
 
みんな悩んでいる。
悩んでいるんだ。
終わってしまった人生を。
そしてどう終末を迎えるかを。
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