半分の心臓
ぱらぱらと入学案内をめくってみる。
 
今年、入学する生徒は600人を超えるらしい。
 
「阿呆が600人・・・。」
 
周囲は
同級生と出会いお互いの近況報告をしている人もいるみたいでざわついている。
 
いや、これは見栄の張り合い。

「本当は受かっていたはずなんだけどあの日、風邪引いててさ」
 
「あの日は、寝過ごした」
 
なんて甲高い声が聞こえる。
受験日は相当医者も忙しかったことだろう。
 
病人だらけで。
 
それにしても、重苦しい空気。
 
口は動いていても
心内はだんまりを決め込んでいる。
 
そのくせにそれぞれがフグのように
毒々しくも尖った針を突き出していて絶望と一触即発しそうな怒りが交じり合い爆発寸前だ。
 
 
一緒にいた松岡は


「あき、俺友達を探してくる」
 
と言い残しどこかへ行ってしまった。
 
この心境が信じられん。
どうして群れたがるのか・・・。
 
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